saji料理教室「おべんとう書簡

第1回

きっかけのサンドイッチ

竹内友梨さん
まるきベーカリー店主。

これから会う素敵なあの人をイメージして作るお弁当と、いろいろなおはなし。

ちょっと気になるあの人の、大切にしていることや、今までたどってきた道のりなど、素敵だからこそ、あれ
やこれやと聞きたくなる。自分とは違う時間を過ごした、ちょっぴり憧れる人々に話を聞きたくて始めるこち
らの不定期連載、題して「おべんとう書簡」。

これから会う素敵なあの人をイメージして作るお弁当と、いろいろなおはなし。
お弁当片手にてくてく、素敵なあの人に会いに行く。

第1回目は、普段からお世話になっている広沢「まるきベーカリー」店主、竹内友梨さんに会ってきました。

 ふんわりとした女性らしい佇まいに、白い肌。ミナ ペルホネンの洋服がとってもお似合いの友梨さん。
おっとりしていますが、さすがお店のオーナーだけあって芯の通った女性です。中学の同級生の彼女とは、
お互いが開業を決意した4年程前に再会しました。彼女がパン屋さんになるきっかけをちゃんと聞くのは、
今回が初めてです。さて、どんないきさつがあるのでしょう。

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パン屋になるつもりは無かった

東京で大学生活を送っていた友梨さん。友人が働くバイト先で人手が足りないとの話があり、ちょうどバイト
を探していたタイミングもあって、そこで働くことになります。今思えば、そこがすべての始まり。勤務先
は、渋谷の百貨店にあるパン屋さんでした。そこで接客を担当する事になったのですが、上司から「声が
小さい」との指摘があり、ほどなくして製造に担当が変わることになりました。

「普段から割と声が小さいと言われることがあるのだけど・・・。この時も指摘されてね。そんな中で、接客
から中に入っての製造に仕事が変わったの。担当したのはサンドイッチだったんだけど、作ったら出来栄えが
綺麗で丁寧だって、店長に褒めてもらえて。あ、楽しいなって。素直にうれしくてね。そして、自分が作った
サンドイッチを買って下さるお客様の姿を見たら、買ってもらえることの喜び、喜んでもらえることの有難さ
を実感できたの。気づけば、大学生活の2年半はこのパン屋さんに在店していたんだよね。」

後に大きなきっかけとなるけれど、意外にもこの時はパン屋さんになるつもりは無かったそう。でも、違う店
で働いていたら、今の自分はいないと語ります。

 「今となっては、あの時のサンドイッチがすべての始まり。最初に働かせてもらったパン屋さんでの経験が
あって、今があるんだなって。」

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安定した暮らし、そして神戸へ

大学卒業後は、地元浜松に戻って事務職へ就職をします。安定した毎日の中で過ごし、帰宅後は自分の時間に
ゆとりのある暮らしをする日々。そんな数年が過ぎたころ、漠然とした将来への不安に駆られることに。

「仕事に不満があるわけではなかったけれど、将来への不安がふつふつと湧きあがって・・・。年齢的なもの
もあったのかな。自分は何もしていない・・・そんな気持ちになってしまって。」

就職してから数年が経ち、ちょうど色々と先の事を考える時期だったのかもしれません。私も同じようなタイ
ミングで路線変更をしたので、共感する部分がありました。

「好きなことを仕事にしたいなって、思っちゃったんだよね。そんな時に思い出したのが、学生時代にバイト
していたパン屋さんでの日々で。パン作り楽しかったな、あんな充実感をまた味わいたいな。そうだ、パンを
作れる人になろう!ってね(笑)」

人生の中での大きなターニングポイントも、ひらりと行動に移せた友梨さん。理由はシンプル。”パンが好きだ
から”。そのシンプルな原動力が友梨さんを突き動かします。今では浜松にも人気のパン屋さんがあちこちに
あって、パン好きの方も多いですが、10年ちょっと前までは、まだ浜松にはパン屋さんは少なかったそうです。

「パンと言えば神戸!って思って。神戸には全国区の大手のパン屋さんもあれば、小さな地元に根付いたパン
屋さんも沢山あって、とりあえず神戸に行けば素敵なパン屋さんがある。そこでパン作りを学びたいと思った
の。でもこの時も、パンを作れる人にはなりたかったけれど、自分でお店を開こうとは思っていなかったな。」

そうして、仕事を辞め、何のつてもないままに神戸へ向かいました。

 

 

 

神戸でのパン修行の始まり、パン漬けの毎日

特に神戸につてのなかった友梨さん。パン作りを学ぶべく、求人募集を見てパン屋さんでの仕事を探し始めました。
パン屋さんの募集条件を見ると、当時は「経験者優遇」と書かれているところが多かったそう。そんな中、
未経験者でも受け入れてくれるパン屋さんに出会います。それが全国的にも有名な老舗パン屋「フロインドリーブ」。
創業1924年、様々な種類のパンや焼き菓子、カフェも併設された長きにわたって愛され続けるパン屋さんです。
ここでパンと焼き菓子を学ぶことに。

「体験見学をさせてもらって、実際に働かせてもらえることになって。ここでパンに関する基本的な知識やノウハウ
を勉強させてもらいました。年齢関係なく、しっかりと教育してくれる社風で、年上の先輩だけでなく、時には年下
だけど先輩にあたるスタッフに指導してもらったり、色々とパン漬けの日々を過ごしたの。憧れて入った世界だけど、
やっぱり現実は厳しかったな。朝早いのはもちろん当然なんだけど、クリスマスのシュトーレンの季節になると更に
忙しくて。
10月から月3~400本のを仕込み、そこからクリスマスに向けてどんどん増えていく。
本当にたくさんパンを作り続ける毎日で・・・。でもね、先輩が私の日々の食生活の事とか気にかけてくれてね。
見守ってくれる温かい環境に身を置けて、
本当にありがたい毎日だったよ。」

ふんわりとして、おとなしい印象の友梨さん。そして、パン職人の朝は早く、肉体労働も多い世界。重たい材料を
運んだり、やけどを負ったりと、学ぶ喜びもあれば、大変なことも多い仕事に、周りのスタッフから真っ先に辞め
てしまうだろうと思われていたそう。しかし実際には芯が強く、決めたらやり遂げる精神力の持ち主。周りの心配
をよそに、2年半以上在籍しました。実際に自分にも後輩ができ、以前の先輩と同じ立場になると必然的に見えて
くる”卒業”。こちらのお店ではひと通りできるようになると一区切りをつけ、
、次のステップへ進む=卒業すると
いうシステムだったそうです。

「大手のパン屋さんでパンの基本を学んだら、今度は個人店で修業したいなって考えたの。今度は小さなパン屋さんで
更にパン作りを学んで、パンをまた違う角度から勉強してみたいなって。パン作りのすべての工程に関わって、近くて
全ての仕事を見て吸収できる個人のお店を探すことにしたの。」

ほどなくして、お世話になったフロインドリーブを卒業し、個人で経営しているパン屋さんを巡ることに。
自分でお店の雰囲気を見て回り、実際にパンを食べてみて、ここだ!と思うお店を探し始めます。
パン修行の第2ステップへ動き始めた友梨さんですが、意外
にもこの頃でもまだパン屋になりたいとは
考えていなかったそう。自分で店を持つことは夢のまた夢だと思っていました。ただパンを学びたい、
パンの事をもっと知りたい、そんな気持ちで動き始めました。

 

神戸の下町、地元で愛されるパン屋さん

 

 

 

 

 

 

 

竹内友梨
まるきベーカリー 店主

神戸での修行を経て、2015年6月に浜松市広沢に「まるきベーカリー」をオープン。パンと向き合いながら、地域に根付く正直なパンを作る毎日。最近では、小麦農家さんを訪れ、製粉から行うパン作りを研究中。